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「水虫じゃないと思うんだ」と言い続けていた方の話

足のトラブルのなかでも、ご本人がいちばん「認めたくない」と感じやすいのが、水虫(足白癬)です。痛みやかゆみがあっても、人に言いにくく、受診も先延ばしになりやすい。今回は、訪問先でお会いした、長く水虫を認めずにいらした方のお話です。

目次

「水虫じゃないと思うんだ」

その方は60代の男性でした。ご家族からのご相談で、足のケアをするためにうかがいました。

足を見せていただくと、指のあいだの皮膚がしっとり白くふやけ、薄くめくれている部分がありました。爪も、一部が白く濁って厚くなっています。看護師の目には、典型的な水虫(足白癬)と爪白癬のサインに見えました。

ところが、ご本人はこうおっしゃいました。

「これね、水虫じゃないと思うんだ。乾燥だよ、たぶん」

それまでも何度か、ご家族から「皮膚科に行ったら」と言われていたそうです。けれど、ご本人は毎回「違うから大丈夫」と返していました。

「認めたくない」気持ちを、責めない

水虫は、医学的にはとてもありふれた病気です。日本人の5人に1人が経験するとも言われ、誰にでも起こりうるものです。けれど、世間のイメージとして「不潔」と結びつけられやすく、人に知られたくない、家族にも言いにくい――そう感じる方が少なくありません。

その日も、ご本人の「違うと思う」という言葉のなかには、本当にそう思っているというより、「水虫であってほしくない」という気持ちが、強く含まれているように感じました。

私はその場で「いえ、水虫です」と決めつけるようなことは言いませんでした。

代わりに、こんなふうにお伝えしました。

「これが水虫かどうかは、皮膚科で顕微鏡を見れば、すぐにわかります。
もし違ったら、それで安心できますし、もし水虫だったら、薬で良くなります」

「断定する」のではなく、「確かめる手段がある」と伝える。それが、その方にとって、構えずに済む言い方だったのではないかと思います。

確かめることは、否定ではない

水虫を疑う理由を、責めずに伝えるのも大切でした。

  • 指のあいだに、皮がふやけている部分があること
  • 爪の一部が、厚く白く濁っていること
  • これらは水虫の典型的なサインだけれど、似た症状の別の病気もあること
  • だから、自己判断ではなく、皮膚科でちゃんと診てもらうのが安心であること

「水虫だから受診してください」ではなく、「水虫かどうかをはっきりさせるために受診してください」。順番をひとつ変えるだけで、ご本人の受け取り方が変わります。

その日、奥さまも同席されていたので、責めずに、サポートする立場で寄り添ってくださるようにお願いしました。

その後

数週間後、再訪したとき、男性は少しばつが悪そうに、こうおっしゃいました。

「やっぱり、水虫だったよ。薬もらって、塗ってる」

「やっぱり」というひと言の中に、ご本人なりの整理がついた様子が見えました。

きちんと治療を始めれば、水虫はよくなります。爪白癬は時間がかかりますが、根気よく続けることで改善が期待できます。家族にうつるリスクも減ります。「認める」までに時間が必要だっただけで、認めたあとは、まっすぐ良くなる道に進めるのです。

ご家族や、同じように悩んでいる方へ

水虫を疑うサイン:

  • 指のあいだが、白くふやけてめくれる
  • 強いかゆみ、または「むずがゆさ」が長く続く
  • かかとがガサガサと粉をふくように厚くなる
  • 爪が白〜黄色く濁り、厚くなり、ボロボロしてくる

ひとつでも気になったら、「水虫だったら嫌だから」ではなく、「水虫かどうか確かめにいく」つもりで、皮膚科を受診してみてください。確かめることは、否定ではありません。

「認めるのが嫌で受診できない」「家族には言えない」というお気持ちは、とても自然なものです。それでも、放っておくと、ご本人の症状も、周囲へのリスクも、少しずつ大きくなります。

おわりに

水虫を「認めたくない」という気持ちは、誰にでもあるものだと思います。だからこそ、ご家族や周囲は責めずに、本人が一歩踏み出しやすい言い方を選びたい。「確かめてみたら」のひと言が、長く続いていた我慢を、ほどくきっかけになることがあります。

足元から、その人なりの安心が、ひとしずくずつ、戻っていきます。

※水虫(足白癬・爪白癬)の確定診断と治療は、皮膚科で受けてください。市販薬での自己判断は、症状を長引かせることがあります。

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